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愛知建築士会学生コンペ2018「旅の建築」

October 25, 2018

先知建築士会学生コンペ2018「旅の建築」の公開二次審査が先週の土曜日に開催された。

審査員長である妹島和世さんとともに、米澤も第一次審査員代表として審査員を務めさせていただいた。

 

午前中のプレゼンテーションとそれに対する質疑応答では、作品ごとの可能性と課題を掘り下げるように質疑を展開し、午後からの最終審査につながるクリティカルな論点をあぶりだすことに努めた。

午後からの最終審査では、まず、「何に挑戦しているのか?」、「それはこれまでの建築の概念をどのように拡張しうるのか?」ということが評価基準となるであろうことを明示した。

最優秀賞を受賞すると原寸大モデル建築として実現されるということが特徴となるコンペである。アイディアコンペよりもリアリティが求められ、常設の建築よりも実験性が求められる。

その上で、各案に対してどこが審査の流れを左右するクリティカルな論点であるかを列挙するように述べた。

 

「オルガン」では、1次審査の時には表現されておらず2次審査において追加された外観に露出する軸組構造の是非について。そこから自分たちの提案のどこがクリティカルであるのかを認識できているのかが問われた。

「行ってきますの先にはただいまがある」では、スケール、エッジのデザインについて。そこから、描きだされた抽象世界を具体現実へと転換する際に何が不可欠であるのかが問われた。「moiré(モアレ) -日常の旅」では、なぜモックアップによる検証を行わなかったのか、スタディから得られた可能性はなんであったのかについて。

そこから、現象的提案に対してリアリティをどこまで持ち得ているのか、形状はそれでよかったのかなどが問われた。

「流れる旅の預け箱」では、自由であることの不自由性、構造フレームの存在感について。そこからさらなる挑戦をどこに求めるのかが問われた。

「CLOUD TREE (クラウドツリー)」では、現象をデザインする際の予期せぬ変数のコントロールについて、現象を発生させるために必要な装置として表れる副産物も含めたトータルデザインについて。そこから、装置機器を超え体験をつくりだす建築のありかたについて問われた。

「のぞき穴の日常」では、目的に向かって設計を進めていく中で生まれた副産物としての形態の是非について。そこから、プロセスとそこに生じるズレの再解釈によるアップデートのありかたについて問われた。

その後、上記に基づき質疑が繰り返され、「CLOUD TREE (クラウドツリー)」、「流れる旅の預け箱」、「のぞき穴の日常」の3案にしぼられ、最終的に、須藤悠果と本田圭による「流れる旅の預け箱」が最優秀賞に、松本樹、駒田浩基、中家優、中城裕太郎、中村勇太、川瀬清賀による「CLOUD TREE (クラウドツリー)」が優秀賞に選出された。

勝敗を決したのは、自身の提案にむやみに固執することなく、自己批判、再解釈を伴い、審査会の場すらも建築案のアップデートの機会であると捉え、よりよい建築を探究し続けようとしたスタンスであったように思う。

もちろん須藤・本田案「流れる旅の預け箱」は、僕が肯定的に王道と評したように、これまで目を向けてこられず裏にひっそりと隠れていたロッカーというものに着目し、それを表舞台にもち出しデザインすることで、豊かな旅の建築をつくろうとする意欲作であった。

惜しくも優秀賞となった「CLOUD TREE (クラウドツリー)」は、高いプレゼンテーション能力で素敵な世界観を描き、現象としての雲をデザインするという挑戦しようとしているテーマも明確であった。現実にできあがったものを体験してみたかったし、相当頑張らなければできないが、不可能ではないという課題にぜひ挑戦して欲しかった。

 

最終審査会を迎えるまでは、本命であったと思われる。そのことを当人達がわかってかわからずか、おそらく審査会での質疑応答を想定し過ぎたのだろう。実現性が問われ減点されることを恐れてかテクニカルな話に終始してしまっていたようにも感じる。問われたのは、世界観とテクニカルの間にある体験であった。

そこが応えきれなかったことが悔やまれる。本コンペは、一次審査があり、二次審査があり、さらにここから数カ月をかけて実現にむけて設計を詰めていかなければならない。このことが大きな特徴となっており、審査においても審査員が各案のさらなる発展性を掘り下げ、それを基にアップデートさせる思考やパーソナリティを持ち合わせているかも審査されたように思う。

このコンペはまだ次のステージに続くということなので、ぜひ最優秀賞を受賞した須藤悠果さんと本田圭さんには、さらなるアップデートを続け素晴らしい作品を実現させて欲しいと思う。

 

コンペの審査会の後、コンペを主催した愛知建築士会と学生団体plustic(大同大学米澤隆研究室も参画)の共同主催による妹島和世さんの記念講演会が開催された。

初期から中と外を繋げたいと思っていて、「21世紀美術館」が竣工した際に作成された宇宙船が降りてきたという映像にショックを受けた。

「ニュー・ミュージアム」では、上に繋げてみ、「ロレックス・ラーニング・センター」では、斜めにも繋げてみたが、それでも納得できない。

そこで「ルーブル・ランス」では、大きなスケールを小さく分けてみて、建物を小さなスケールの連なりにしようとした。

「なかまちテラス」では全体性を解体してバラバラに解こうとした。

さらに、「西野山ハウス」では、屋根は周囲に馴染ませるために使えると考え、屋根をキーワードに分節とシェアを試みた。

「グレース・ファームズ」では、ヘビのようにうねる連続体とし、分棟と繋がりの両立に挑戦した。どれもが歴史に残るであろう超名作建築である。

にもかかわらず、その建築に対してショックだとか納得できないという言葉を用い、課題を見出そうとしている。

そして次の建築作品でさらなる挑戦をし続けている。その根底には、「周囲に馴染ませたい」、「内と外を繋げたい」という考えがあるという。

建築における普遍的なテーマである。妹島さんは、素直にそして真摯に建築と向き合っている。

にもかかわらずだ、圧倒的な作家性を帯びてしまう。

妹島さんが自作から課題を見出し挑戦し続けてきたその足跡には、「白・透明性・軽さ」→「曲線」→「水平への繋がり」→「垂直への繋がり」→「斜めへの繋がり」→「分棟」→「屋根」→「連続体」といったような新しい建築のボキャブラリーが生み出されていき、それ以降の建築界に多大な影響を与えている。

(そのことから展開させ、講演会のシメとして質問をキメさせていただいた。)

あまりにも素直な言葉でとんでもないことが語られていることに、ぞくぞくし身震いがした。久しぶりに建築に対する夢を見させていただいた。

 

先ほどまで、歴史に残るようなとんでもない大建築家とともに審査をさせていただいていたという事実に改めて気付かされる。

実のところ、妹島和世さんと2人で審査員を務めなければならない(コメンテーターのかたはいらっしゃるが)ということで、緊張して前日はあまり眠れなかった。審査員として審査する側であるにもかかわらず、その審査内容をさらに妹島さんから審査されるという構図が発生するであろうから。帰り際、妹島さんから感謝の言葉ともお褒めの言葉ともとれる言葉をかけていただけた。

この言葉は、僕にとっての賞みたいなものである。

 

 

 

 

 

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