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UCO(旧潮寿司)

UCO(旧潮寿司)、戦後まもなく建てられ、長らく町の人々に愛された港まちの元寿司屋。

約20年、空き家となっていた期間を経て、2016年にアッセンブリッジ・ナゴヤ(名古屋の港まちを舞台とした音楽と現代美術のフェスティバル)をきっかけに、喫茶を中心に展示やイベントなどを繰り広げるスペースとして再生され、最近では、まちの社交場として町内外の人々の交流の拠点になっている。この建築が、まもなく終わりを迎えようとしている。

この建築との出会いは、アッセンブリッジ・ナゴヤのアーキテクトを引き受けることになった2016年1月のことだった。

20年もの間、空き家となっていたこともあって、埃をかぶり家具や物品が放置されていたが、一歩足を踏み入れると、20年前から時が止まった空間の中を、時を超えて彷徨っているようで、間口が広く奥行きが浅い独特の形状によるものか、当時の時代状況を反映させたような装飾のためか、生活の痕跡が積層していたためか、建築空間に魅力を感じたことを覚えている。

この建築をアッセンブリッジ・ナゴヤの会場として再生させることが決まり、そのプロセスすらもプロジェクトにしてしまおうということになった。

それで僕がコーディネーターを務めるかたちで、工務店さんや大工さんを講師として招き一般に参加者を募り、耐震補強を主目的とした「空き家再生スクール」を開催した。

リノベーションのプロセスは、数十年前にこの建物を建てた大工さんとの会話であり、駆け引きのようなものであった。「なぜ、ここにこのような部材を使ったのですか?」、「それはね、戦後まもなくでそれしか手に入らなかったからだよ。」といった具合に。

天井を剥がし、壁を解体し工事を進める度に、予期せぬことに遭遇し続けた。

どれもこれもが本当に険しい道で、その度に頭を悩ませ、みんなで力を合わせて一つ一つなんとか乗り越えていった。

こうして耐震改修され再生された建物をLPACKの2人が、元の建物、生活の痕跡、耐震改修、そういったこの建築が経たプロセスを尊重して、むしろそれを表現として見せ、とっても素敵な建築空間に仕上げてくれた。

それから3年が経ち、気が付けば、地域の住人、地域外からの来訪者、様々な人が立ち寄る町の社交場のような存在になっていた。アート展示や音楽イベントやいろんな活動が行われる場所になっていた。

コミュニティっていうのはこういうことだなぁと改めて実感させてもらったし、空き家を再生させるってこういう可能性があるんだなって思わせてくれた。

そんな折、UCOの閉店と、この建築の解体が決まった。

建築の敗北か?社会変化のダイナミズムの中にあって、建築の可能性と限界のジレンマを感じざるを得ない。

10月26日、27日、28日の3日間「UCO最後の3日間」と題し「Gofish UCOの裏庭ライブ」、「Useful Copied Objects」、「Culture Club UCO -YOGA-」、「折坂悠太 平成最後のUCOライブ」、「たとえば、いつもより早く起きて港街でモーニングを食べてみるとする。」、「Chap Books Club」、「角銅真実と横手ありさによる大晦日コンサート」など様々なイベントが開催された。建築がハブとなり、様々なアーティストの創作を呼び起こし、様々なアクティビティがあちらこちらで発生し、場の可能性がどんどん拡張されていく。

UCO最後の夜、角銅真実さんと横手ありささんによる音のパフォーマンス、山城大督さんによる空間演出、それを支える新見永治さん、アッセンブリッジナゴヤメンバー、東京をはじめ遠方からも駆けつけてくださったたくさんのアートや音楽のファンや関係者、ご来場いただいた地域にお住いのかたがたがUCOの1階で、UCOの2階で、UCOの踊り場で、UCOの路上で、UCOの裏庭で、UCOの隣で、UCOの向かいで、あちらこちらでまさしく同時多発的に、生まれるでもつくられるでもない、ふるまいと空間の連環関係が発生し、あの場にいるものでしか共有し得ない、なんともいえないハーモニーが出現していた。

伝説の一夜、少なくとも僕の目にはそのように映っていた。

僕がこれまで理念とし語り続けてきた「同時多発的建築」、「つくると生まれるの間」といった状況が(僕がしかけたというわけではないが)まさに今ここでおこっているということに素直に感動した。建築が数十年のその命をまっとうしようとしている。

空き家として放置されていた20年の歳月を経て、命の灯が燃え尽きるかのように、光を輝かせた最後の3年間。終わりかたの作法という言葉を考えた。武藤隆さんと小田桐さんから語られた「建物の送り人」という言葉にハッとさせられた。

建物がなくなることによる力学と美学。一方で、この奇跡的な一夜に至るまでの様々な人、こと、ものが関わったそのストラクチャーにも想いを馳せる。

いかに、このことを記述することができるか。このことは今後の課題でもある。

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