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Under 35 Architects Glass Architecture Competition

Under 35 Architects Glass Architecture Competitionの公開審査会において、過去の最優秀賞受賞者としてミニレクチャーをさせていただき、審査にも講評者という立場で参加させていただいた。 昨日のことのようであるが、もうあれから4年も経つのだなと。 レクチャーのために改めてGlassPavilionについて思い返してみていたが、想像を絶する日々であった。言うは易し、実現は難しで、今考えても、よく成立させれたなと思うほどである。 柱も壁も用いず、ガラスを構造体として自立させるという夢のような話からはじまり、構造家の藤尾さんの多大なる協力もあり、それを成立させるロジックがたつ。そこからが大変であった。いくつも様々な試作を製作しその数だけ失敗を重ねた。失敗は成功の母という言葉があるように、失敗の数だけ発見するものがあり、なんとかモックアップを成立させることができた。製作にあたっては、試作の製作を何回も繰り返し熟練させた所員や学生達の精鋭7人を東京に引き連れ、1日2時間ほどの睡眠時間な中、1週間以上もの間、ひたすら作業にあたった。製作期間中のあまりにもの壮絶さと、理論上は成立するとはいっても本当にガラスだけで自立し約100kgにもなる鉄骨の屋根を浮かばせることができるのだろうかというプレッシャーから、ジャッキダウンしガラスが自立したときには、京橋の交差点で人目も気にせず男泣きをした。 さらには、みんなの力によって成立したGlassPavilionはもはや僕の人生そのもののように思え、ここで結婚式を行うことになった。公私共に忘れることができないプロジェクトとなった。 その裏では、費用が予算を大幅にオーバーしてしまうだとか、製作期間中、完成してからもガラスが何十枚も割れるという数え切れないほどの問題も発生していた。 上手くいったことも上手くいかなかったことも包み隠さずお話させていただいた。少々のユーモアも交えて。 今でも印象に強く残っている言葉がある。様々な問題が続出し責任を感じ悩んでいる折、審査委員長であり日本を代表する構造家である佐藤淳さんから「これくらいがいいんだ。実際の建築では、こういう問題がおこってはいけない。けれども、このような挑戦が求められる仮設建築においては、全く問題がおこらないというのは新しさがないともいえる。重大な問題がおこってはいけないが、小さな問題が噴出するぐらいのほうが、ギリギリの挑戦をしていて、こういう場においてはよりよいんだ。問題から得られる知見は大きい。」とおっしゃっていただいた。救われた気持ちになったと同時に、このまま消極的になってしまっていたかもしれないまだまだ駆け出しの建築家の背中を挑戦を止めるなとおしていただいたような気がした。

審査講評に関しては、三者三様の提案と建築家像が見え興味深かった。 このコンペにおいては、自分の経験を通して考えてみると、 ①何に挑戦しているか?(特にメカニズムにおいて) ②これまでにない、どのような可能性、体験を提示できるか? ③この機会を通して建築家としてどのような成長を描けるか? の3つの観点が大切になるように思う。 川嶋案「こちら側とあちら側」は、光の状態によるガラスの映り込みと透過の変化に着眼し、一部に穴のあいたガラスの壁を角度を変え幾層にも重ね合わせることで複雑な現象を生み出そうとしている。 ガラスのよく知られている性質である反射と透過を主題にしているだけに、断片的には誰もが体験したことがあるものを、いかにこれまでに体験したことのないような現象にまで到達させていけるかが問われる。その突破口になりそうな穴の意味やガラス面の角度などがまだまだふわりとした希望的観測にとどまっている。スタディを重ねその中から再発見、再解釈を行い現象をつくりあげるロジックを組み上げていくことが求められるように思う。 酒井案「砂漠のフォリー」は、手の平サイズの薄いガラスのピースを樹脂ジョイントで繋ぎ合わせ幾層にも重なり合うドームをつくりあげるというもの。 米澤作品との類似性が問われたりもしていたが、いとも簡単に軽やかにやってみせている点が異なる。その点から、持ち運びや気軽な組み立ての可能性が想起される。一見、仕組みも形もシンプルではあるが、その分、難題も多く立ちはだかるだろう。酒井の独特な論調と話しぶりは、想定外を楽しんでいるようにすら思われる。このコンペは製作まで3、4ヶ月の期間がありその間のブラッシュアップが求められる。酒井のスタンスは何かおこしてくれそうな期待感をもたせる。 実施コンペというのは、提案の良し悪しのみならず、建築家の人間性も問われるものである。 前嶋案「ガラスの水平線」は、薄く広がった無垢のガラスを浮かばせるというもの。ガラス工場を見学した経験からインスピレーションを得て、ガラスの大判を光や雨などの自然を受け止める屋根としてとても美しい光景にまで昇華させている。 それがどのような体験を生むのか想像がつかず一番見てみたいと思わせる案である。反面、ポエティックでアイディアコンペのようにも思われ、それを成立させるメカニズムや設計手法のオリジナリティがもう少し欲しかった。それとこの作品はスケールというのが重要な要素となっているように思われ展示会場への適応が難しいのではないかと思った。 以上が米澤の講評になるが、太田浩史氏、佐藤淳氏、平沼孝啓氏、新井太吉氏の4人の審査員からは、それを成立させる構造のありかた、形状を決定する上での設計の判断基準、コンペ時の提案を展示会場にいかに置き換えるか、提案のオリジナリティはどこにあるかなどが問われた。

厳正な審査を経て最優秀賞に選ばれたのは、川嶋洋平案の「こちら側とあちら側」であった。 改めておめでとうございます。 みなさんお疲れ様でした。 来春に開催される展覧会で素晴らしい作品が見られることを期待しています。

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